事業承継税制とは?制度の特徴や利用時の注意点
中小企業において事業承継は重要な課題の一つですが、その際に大きな障壁となるのが「相続税」や「贈与税」の負担です。
これらの税負担という課題を解消するために設けられたのが「事業承継税制」です。
本記事では、法人向けの事業承継税制の概要や特徴、利用時の注意点について紹介します。
事業承継税制とは
事業承継税制とは、一定の条件を満たす中小企業が、後継者に非上場株式を相続または贈与する際に、相続税・贈与税の納税を猶予・免除できる制度です。
中小企業の後継者不足が社会的課題となる中で、2009年に創設され、2018年には制度の大幅な拡充が行われ、より多くの企業が柔軟に活用できる制度となりました。
制度の特徴
事業承継税制には「一般措置」と「特例措置」の2つの枠組みがあります。
一般措置は恒久的に利用可能で、贈与や相続で取得した株式の一定割合について納税猶予が受けられます。
一方、特例措置は2027年12月末までの時限措置で、条件を満たせば株式全体について猶予が受けられ、最終的には免除される可能性もあります。
さらに、一般措置は一定の親族への承継に限定されるのに対し、特例措置は親族外の後継者にも適用可能です。
ただし、特例措置を利用するには、さまざまな要件が追加されます。
利用する際の注意点
事業承継税制は強力な支援制度ですが、適用には主に以下のような注意点があります。
手続きの煩雑さと継続的な報告義務
事業承継税制を利用するには、都道府県への「特例承継計画」の提出や、税務署への届出書類の作成・提出など、複雑な手続きが必要です。
適用後も、都道府県や税務署への定期的な報告が求められるため、継続的な管理体制が必要です。
取り消しリスクとその影響
納税猶予を受けた後でも、一定の「取り消し事由」に該当すると、猶予されていた税額が一括で課税される可能性があります。
たとえば、後継者が代表者を退任した場合や、株式を第三者に譲渡した場合、同族関係者の議決権割合が変動した場合などが該当します。
法改正による制度変更への対応
事業承継税制は時限的な特例措置を含むため、将来的に制度内容が変更される可能性があります。
実際に過去には制度の要件や期限が見直されており、現在の条件が将来も継続するとは限りません。
なお、本記事の内容は2025年7月時点の情報となります。
まとめ
事業承継税制は、後継者へのスムーズな株式移転を可能にし、中小企業の存続と成長を支援する制度です。
ただし、手続きの煩雑さや制度の条件には注意が必要であり、単に税金の負担を減らすためだけに利用するのではなく、将来の経営計画に基づいた活用が求められます。
事業承継を検討する際は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。
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昭和62年~平成24年 大手税理士法人等でパートナー税理士として在籍
昭和62年 税理士一般試験合格
平成2年 税理士登録
平成24年10月 大手税理士法人退職後、税理士事務所開設
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